「とりっくおあとりーと!」

「はいはーい次はどこのおちびちゃんだい?」
「こらまたかわええなあ」

ドアを開けたフランスとスペインは子供たちの凝った仮装に感嘆した。といってもこの二人もまだ少年の域を抜けていないため、フランスは吸血鬼、スペインはゾンビの仮装をしていたが。

「魔女の恰好しとるんはポーランドやな?」
「そうやしー」
「狼男はリトアニアか?」
「はい。そうです」

ポーランドは菓子をねだる手を伸ばしてまとわりつくが、リトアニアは律義に腕を体の脇に揃えて答えた。対照的な二人であるが、幼なじみのこの二人はなんだかんだと仲が良い。

「そっちのちびっこいの二人は見たことないぞ?」

ポーランドとリトアニア二人の後ろに隠れるようにしてもう二人子供がいることに気付く。

「あっ、こいつらは新しく生まれた国なんよー」
「眼鏡掛けてるほうがエストニア、小さいほうがラトビアです」

エストニアはフランケンシュタイン、ラトビアはゴーストの恰好をしていた。

「は、はじめましてえすとにあです」

エストニアはもじもじとしながらもきちんとした挨拶をする利発そうな子供であった。一方ラトビアはポーランドの後ろに隠れてしまいぶるぶると震えていた。

「ああ〜フランスがエロい視線送るから怖がってしもたやんかー」
「人の事言えないだろうがこのロリコンが!」

ほらほら怖いことあらへんでー、としゃがみ込んで話しかけたスペインに下から伺うような視線を向けたラトビアはポーランドに押し出されてしまい逃げ場がなくなる。

「ぅ…ぁ…」

涙目でぷるぷると震える様は大変愛らしく、庇護欲をそそられる。

「ほら手ぇ出せって。お菓子やれないだろ?」

保護したい気持ちが勝ったのかこちらもしゃがんで話しかけたフランスの手からキャンディを受け取ったラトビアは俯いて小さく、けれどしっかりとありがとうございますと呟いた。

「ほらほら自分らもお菓子やでー」
「あっ俺チュロスゲットやしー!」
「こらっポーランド、エストニアに選ばせてあげなよ」
「ありがとう…」

銘々菓子を受け取ると、次の家を訪問するためにと駆け出した。

「ラトビアどうしたの?」
急に立ち止まったラトビアにリトアニアが声を掛ける。
街にはお菓子をもらうために子供達が集団で歩いていた。
しかし、ラトビアの視線の先には一人で物影に佇み、街を駆け回る子供達を羨ましそうに見つめる背の高い子供がいた。年の頃はポーランドやリトアニアと同じか少し上であろう。

「あ、あいつーなんか北のほうのやつやしー。なんかいつも一人でおるんよ」
「なんかよくわからない子だよね」

年長の二人は彼の事を好ましく思っていないようで近付くことはしなかった。
しかし、ラトビアは気になるのかじっと見つめたまま動かずにいた。

「ラトビア、次行こ?」

リトアニアが声をかけると、急にぱっと走り出す。向かうのはあの少年の元。

「あげるっ」

先ほどフランスからもらったキャンディをぐっと突き出す。
少年は驚いたようで固まっていたが、ラトビアが再度拳を突き出すと、ありがとうと蚊の鳴くような声で礼を言い受け取った。

「何しとんーラトビアー次行くし!」

皆の元へ駆け戻ったラトビアはポーランドに手を引かれ次の家へと向かい歩き出す。



雲間から射す月明かりの中、少年はじっと姿が見えなくなるまで佇んでいた。

















長くなってすいません!
バルトでハロウィンです〜。個人的な趣味でフランス兄ちゃんとスペイン兄ちゃんに登場してもらいました。
あと…最後ほんのり露ラト風味(ラト露…?)にしてみたのですがいかがでしょうか??
是非子ロシア様には半ズボンを穿いてもらいたいと思った今日この頃です。