「…へぇ、そうなんだ?」 そう言ってうっすらと笑う顔を見てラトビアは凍り付いたように動けなくなる。 暑くもないのに背筋にひとすじ汗が伝った。 きっかけは何であったか。些細な事だったように思う。 ラトビアは普段は自らを戒めているが、少しでも気を抜くと少々粗が出る。リトアニアやエストニアには「天然だ」とからかわれるこのことは、ラトビアのコンプレックスでもあった。世界の大舞台に打って出られるような立場ではないが、そうなるためには不都合な性質であると思っている。ぼろがでないようにしなくては。 そうして常に気を張っていたのだが。 今回はよりにもよって、うっかりの相手がロシアである。 笑い事では済まされない。 しかも心に秘めていたことを悟られてしまった。 そしてそれがなにより… 「まさかラトビアが僕のこと好きだなんて」 ということなのである。 かねてより、ラトビアにとってロシアは脅威であった。 一緒の空間にいるだけで気が張り詰め、全身が強張ってしまう。目でも合おうものなら血が凍り付き、話をしようものなら蒸発せんばかりであった。 とはいえ鉄のカーテンで西側諸国との交流が断絶された今では彼の元で働くしかなく、びくびくぶるぶると震えながら日々を過ごした。 それがいつの頃からであろうか、変化した。 全身の緊張による動悸と震えは変わらず続いていたが、何故か恐ろしい筈の彼の姿を目が自然と追っている。 その視線が己に向けられれば血管が萎縮してしまうのに、何故か喜ばしい。 言葉を交わせば、何故か天にも昇る気持ちになった。 これは、恋だ。 エストニアあたりには恋愛小説の読みすぎだとやゆされそうな論理展開だが、確信した。 自分は恋をしている。あのロシアに! だが、決して彼にはバレてはならないと思った。 それは流石に恐ろしい。いったいどんな事になってしまうのか想像もつかない。 そう思っていたのに。 認識の変化とは大きなものである。 慕わしい気持ちが気の緩みを招いた。 なんとも逆説的ではあるが、その好意が気持ちを漏らすきっかけになってしまったのである。 「隠してた悪い子にはおしおきだよね?」 仕置き、という言葉には背筋も凍る思いであるはずなのに、ラトビアの胸にその言葉は甘美な響きで広がっていった。 露様にうっかり心を開きすぎちゃうラトビアでダダ萌えさせていただいた勢いで書いてしまいまし…た。そして押し付けてしまいまし…た。 なんだか吊橋効果みたいになってしまいました…しかもギャグ…? ラトビアの感情すらも利用するロシア様に、従うしかないラトビアとか…もう、もう、萌える…!!!なのにー!なんか違う! 役不足でござった…相済まぬ。。。 |